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子育てや介護に関する行政手続きが手軽に、その後の最新情報の取得や個人の情報開示が簡単に。マイナポータルのサービス開始に伴い、国と個人とのオンライン上でのつながりがとても深くなりました。
マイナポータルは、個人だけじゃなく法人にもやさしい!
「法人設立ワンストップサービス」で、スムーズな設立手続が可能に。設立手続きや設立後にかかる時間・手間を大きく省略でき、気持ち良く会社がスタートできるサービスです。
ただ、法人設立ワンストップサービスの利用にあたり、準備するものが少し大変だと感じるかもしれません。
そこで、
「通常と何が違うのか?」
「利用するメリットは?」
「利用するにはどんなものが必要なのか?」
と気になるあなたへ、これまでの法人設立手続きとの比較結果からみる6つのメリットをご紹介。主な流れや事前準備もチェックしながら、法人設立ワンストップサービスについての理解を深めていきましょう。
目次
「法人設立ワンストップサービス」で設立・設立後の手続申請が簡単に
※出典元:法人設立ワンストップサービスHP(2020年8月時点)
法人設立ワンストップサービスの目的
「法人設立ワンストップサービス」とは、法人の設立登記後に関する手続きがインターネット上でまとめてできるサービスのこと。起業環境を世界最高水準にするのが目的で、2020年1月20日から開始しています。
利用者は、国が運営するアプリから「かんたん問診」で設立に関する現状をチェック。質問に答えながら事業ごとに異なる必要な手続きが確認できたり、どこまで申請が終わっているかが確認できたりします。
会社を無事に設立するまで、私たちはいろいろな場所へさまざまな届出・申請をする必要があります。でも、その手続きが一気に終われば、店舗の準備や商品開発に集中して取り組めそうですよね。
現在も利便性が進化している
住民票を有する国民すべての人がもつ12桁の番号「マイナンバー」。この制度をうまく活用してできた「マイナポータル」。法人設立ワンストップサービスは、そこから生まれたまだ認知度の低い新しいサービスです。
現在、法人設立ワンストップサービスでできる届出は、
- ・国税
- ・地方税
- ・健康保険・厚生年金保険
- ・労働保険・雇用保険
に関する「法人設立登記後の申請手続」のみ。そして、今後(2021年以降の予定)は
- ・定款認証・法人設立登記
なども可能になります。
※出典元:マイナポータルにおける「法人設立ワンストップサービス」の提供開始について|内閣府(2020年8月時点)
法人設立ワンストップサービスと通常時の比較
これまでの法人設立手続きと比べて、どんなことが変わっているのかをみていきましょう。
主な手続きの流れ
会社を設立するには、以下の流れで進めていきます。
【➀設立準備】
- ・会社の基本情報の決定(法人形態、商号、本店所在地、事業目的、資本金など)
- ・定款の作成
【➁定款認証・設立登記手続】
- ・定款の認証(株式会社など一定の法人形態の場合)※公証役場
- ・設立登記申請 ※法務局
- ・法人番号の取得(登記後、通常は自動的に付与) ※国税庁
【③法人設立登記後の申請手続】
- ・法人設立届出書 ※税務署
- ・法人設立、設置届出書 ※都道府県/市区町村
- ・健康保険/厚生年金保険新規適用届 ※年金事務所
- ・労働保険関係成立届 ※労働基準監督署
- ・雇用保険適用事業所設置届 他 ※ハローワーク
通常は、税務署・都道府県税事務所・市役所・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへそれぞれ出向きながら手続きが必要。オンラインでも申請できますが、「e-Tax」、「eLTAX」、「e-Gov」などシステムごとに違う操作で進めなくてはいけません。
そのため、設立の進捗が分かりにくかったり、同じ書類を何部も用意して各機関へ提出したりする手間がありました。
一方、法人設立ワンストップサービスを利用すれば、③(2020年1月~)と➁(2021年2月予定)がインターネット上で手続き可能に!同じ操作方法でまとめてでき、手続漏れや重複の防止など役立っています。
設立登記の完了期間(2021年2月以降予定)
※出典元:法人設立手続オンライン・ワンストップ化検討会|首相官邸HP(2020年8月時点)
従来は登記の依頼をしてから「7日間」で登記が完了していましたが、2018年3月からは株式会社と合同会社を対象として原則3日以内とする取り組みがスタート。しかし現実には3日超の期間を要するケースも少なくありません。
一方、法人設立ワンストップサービスでは、審査業務などの処理が24時間以内で可能に。その結果、設立登記も24時間以内で完了し、会社ができるまでの期間が大きく短縮されています。
定款認証と設立登記の手続き(2021年2月以降予定)
※出典元:法人設立手続オンライン・ワンストップ化検討会|首相官邸HP(2020年8月時点)
株式会社の場合、設立登記の前に「定款認証」が必要です。(定款とは会社の基本的なルールです。詳しくは以下の関連記事をご参照ください。)
通常、公証役場へ出向いて公証人から認証を受けるまで、問題なければ1日で完了しますが、手間や待ち時間が発生。また、定款にその場で訂正できない問題があれば後日再度公証役場に出向くことになり、さらに負担が大きくなります。
一方、法人設立ワンストップサービスなら、定款認証と設立登記が同じタイミングで申請可能!定款認証はテレビ電話での手続きもOKに。設立登記はインターネット上で手続きでき、24時間以内に完了します。
関連:定款とは会社の基本的なルールブック。内容を慎重に決めて作成すべき理由とは?
印鑑届出の取扱(2021年2月以降予定)
※出典元:法人設立手続オンライン・ワンストップ化検討会|首相官邸HP(2020年8月時点)
通常の設立登記は、朱肉で押印した代表者印が必要。また、オンライン申請であっても書面を別途郵送または持参しなくてはいけませんでした。
しかし、令和元年度税制改正からは、マイナポータルを利用して設立登記をする場合「印鑑届出の提出は任意」となっています。
法人設立ワンストップサービスの「6大メリット」
通常時と比べてみると、法人設立ワンストップサービスでできることが少し分かってきたのではないでしょうか?なんとなく、会社がスムーズにスタートできそうなイメージですよね。
このサービスを利用するメリットは、ずばり6つ!
- 1.移動の時間や交通費等が節約できる
- 2.手続きの時間・場所が自由である
- 3.複数回の手続きが不要になる
- 4.設立までの期間が短縮できる
- 5.印鑑届出の手間が削減できる
- 6.業務効率化&エコに役立つ
それぞれを詳しくご説明します。
1.来庁不要!時間・手間・交通費が節約できる
法務局や市役所など、手続きをする場所へ足を運ばなくてもOK!インターネットのつながる環境で利用に必要なものを手元に用意すれば、自宅でも出張先でも手続きができます。
分からない点が多い場合は、専門家のアドバイスを聞きながら一緒に進めていくことも可能。自宅ですれば移動の時間・手間・交通費が節約できるので、その分が開店準備などへ充てられます。
2.時間も自由!24時間365日手続OK
24時間365日、いつでもOK!閉庁している日(土日祝日等)や時間帯(早朝・深夜)でも、自分の都合の良いタイミングで手続きができます(※時間外の場合は翌稼働日に受付完了)。
途中で休憩をしたり後日に回したりもできるのでストレスがかかりにくく、届出書に記載する内容がじっくり考えられるのも魅力です。
3.一括管理!複数回の手続が不要に
共通する事項は1度の入力ですべての書類に反映されるので、同じことを何度もくり返す手間が省けます。
また、「かんたん問診」によって自分に必要なことが分かり、設立登記後の手続きが終わるまでの状況をオンラインで把握可能。申請漏れや重複などの心配もありません。
4.法人設立までの期間が短縮
来庁不要でいつでも申請できるので、移動時間が削減。また、同じ書類を別の場所で記入したり、来庁をくり返したりする時間も省けます。
さらに、2021年以降は定款認証と設立登記も同時に申請OKとなる予定。会社を作りたい!と行動を始めてから登記が完了するまでの時間が格段に短くなります。
5.印鑑押印の回数が減らせる
電子証明書を利用するので、設立に必要な契約書等への押印の回数が大幅に減!印鑑が不鮮明で、書面が受理されないというトラブルの心配もありません。
6.ペーパーレス化で業務効率化&エコ
情報はすべてデータ化されるので、知りたい情報が効率的に探せます。また、紙代・印刷代がかからず、紙を保管するファイル・スペースも不要。書面の紛失や盗難のおそれもありません。また、紙の消費が減らせるので、地球温暖化などの環境破壊が抑制できます。
【注意】利用前にさまざまな準備が必要
法人設立ワンストップサービスを利用すれば、会社が簡単に作れそうですよね。確かに、手続きは時間・手間・費用が削減できるのでラクになります。
ただ、法人設立自体の法律が大きく変わったわけではありません。定款認証や設立登記にな書類はもちろん、利用に対しての環境を整える必要もあります。
マイナンバーカード取得
法人設立ワンストップサービスを含め、マイナポータルを利用するときはクレジットカードのような”プラスチック製”の「マイナンバーカード」が必要。マイナンバー制度のスタート時に届いた”紙製”の「マイナンバー通知カード」しか持っていない場合は、交付手続きをしましょう。
申請方法は、以下の4種類。不備なく受理されれば、市区町村から交付の準備ができたというお知らせがおおむね1か月間で届きます。
- ・スマホ
- ・パソコン
- ・証明写真機
- ・郵便
マイナンバーカードには、名前・住所・生年月日・性別・顔写真・発行者名・有効期限と、マイナンバー12桁を変換したQRコードが表記されています。運転免許証のように公的な身分証明書として広く利用でき、最近では「マイナポイント」「マイナタッチ」など便利なサービスも普及しています。
ただし、実物が手元に届くのは1か月以上かかるので早めの手続きが必要。今すぐ申請をするのがおすすめです。
利用に必要な機器
申請するには、
- ・ICカードリーダライタ
- ・マイナポータルアプリ
- ・動作環境(OS・ブラウザ)に対応したスマホ・パソコン
も必要です。
ICカードリーダライタは、Amazon・楽天市場・家電量販店などで購入可能。ただし、「公的個人認証サービス」に未対応の製品もあるので、事前に対応機器を確認しておきましょう。こちらの「対応機種一覧」からチェックできます。
利用可能までの手続き
2020年8月現在、法人設立ワンストップサービスで会社の設立手続きをするには、「設立登記完了」後に国税庁から通知された「法人番号」が必要です。
以下にて大まかにご紹介しますので、あなたが今どれだけ準備が整っているかを1度チェックしてみてくださいね。
【準備物】
- ・法人の基本情報の決定(商号、本店所在地、資本金、事業目的、決算期 など)
- ・個人実印、会社実印の作成
- ・定款の作成
- ・定款認証のための書類等(個人実印の印鑑証明書、手数料 など)
- ・発起人による資本金の準備
- ・登記のための書類等準備(登記申請書、定款、払込証明書 など)
【手続き】
- ・個人実印の登録、印鑑証明書取得
- ・定款の認証
- ・発起人による個人口座への入金振込
- ・設立登記
- ・証明書の取得(登記事項証明書、会社実印の印鑑証明書)
ここまで完了すれば、法人登記が完了し、法人番号指定通知書と国税庁法人番号公表サイトに「法人番号」が記載されます。
※参照元:法人設立ワンストップサービス開始までのフローチャート|法人設立ワンストップサービスHP(2020年8月時点)
事前準備も簡単&スピーディーにする方法
法人設立ワンストップサービスを利用すれば、いつでもどこでも起業できる!ただ、会社を作るのが不慣れな人にとっては、難しい言葉がずらっと並んだ届出書の数々にとまどい、会社の運営や将来性にも不安が多いと思います。
そんなときは、専門家に相談がベスト!やや費用はかかりますが、設立や法律に詳しいプロと一緒に手続きを進めていけば、設立登記が完了するまでもがスムーズに。会社にとってベストな定款が作成でき、届出書の作り直しなども防げます。
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「定款って何?」「設立登記って何?」
そんな疑問にも1つずつ丁寧にお答えします。
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福井県出身。東京大学経済学部卒業。 ㈱野村総合研究所で経営コンサルタントとして活動後、日本コカ・コーラ㈱においてコカ・コーラ及びファンタブランドのマーケティングを担当。 現在は税理士として、福井県、東京都の顧客約270社に対して経営支援専門サービスを提供中。 専門分野は法人税、所得税、相続税、消費税、事業税、住民税、関税、印紙税、国際税務、国税徴収法、会社法、社会保険・労務、事業戦略立案、経営管理システム構築、マーケティング 保有資格 税理士・行政書士・社会保険労務士試験合格者・通関士試験合格者・基本情報技術者・日本証券アナリスト協会検定会員 所属団体 東京税理士会・東京行政書士会・日本証券アナリスト協会